2015年3月23日月曜日

6年半の研究活動を終えて

ザンビア特別教育プログラムの3年半と博士課程後期の3年、合計6年半の研究活動を終え、博士号を取得しました。

ザンビア特別教育プログラムでは、入学前に青年海外協力隊の理数科教師としてパプアニューギニアで活動した際に感じていた、より効果的な教育の質的向上には現場での実践を理論化する必要があるのではないか、また子ども達が理科と数学を関連付けることで理解が進むのではないか、という課題意識のもとに研究を行いました。そこでは、理科と数学の文脈依存性(数値と解法が同一の問題において,理科と数学の出題の文脈の違いによって生徒が異なった解答を示すこと)に着目し、文脈依存性の要因の同定及び文脈依存性を乗り越えるための授業開発を行いました。その結果、3つの文脈依存性の要因、文脈依存性を乗り越えるための具体的方策が明らかになりました。他方で、文脈依存性を乗り越えることが本当にその国にとって必要なのかという疑問も残りました。


そこで博士課程後期においては、開発途上国においてどのような教育を行うべきかに焦点を当て、「理科と数学を関連付けるカリキュラム構成原理に関する研究―ザンビア共和国中等理数科教育の事例を通して―」について研究を行いました。通常、教育の可能性や必要性を同定するには、3つの側面(社会・学問・子ども)から検討する必要があることが知られています。社会的側面とは社会が教育に求める内容によるものであり,学問的側面とは理科や数学の研究に基づくものであり,子どもの側面とは子どもの実態に基づくものです。つまり、ザンビア特別教育プログラムで研究した内容は子どもの側面に基づく考察であり、その一側面を捉えたものにすぎませんでした。そこで、さらに社会的側面と学問的側面から考察を行い、理科と数学を関連付けるカリキュラム構成原理を導出しました。


これまでの経験を振り返ると、国際協力に対する視点が徐々に変化してきたように感じます。理数科教師として活動していたパプアニューギニアではどうすれば目の前の子ども達が理解してくれるか、ザンビア特別教育プログラムでは学校や地域においてどのような授業を行えば良いか、博士課程後期ではザンビアにおいてどのような教育を行うべきか…より効果的な国際教育協力を求め、その対象が広がっていったように感じます。そしてそれは、研究という視点を持ち、実践を理論化することで実現することができました。ここに、国際教育協力において研究を行う意義があるように感じます。

4月以降は日本学術振興会の特別研究員として引き続き広島大学に在籍する予定です。今後はより対象を広げ、世界においてどのような教育を行うべきか探究していきたいと思います。

ザンビア特別教育プログラムHP: http://home.hiroshima-u.ac.jp/zamproba/