2011年9月15日木曜日

研究の話

こんにちは。
IDECで理科教育講座に所属している中里春菜と申します。

私はザンビアプログラムの一員として2009年から2011年までの2年間ザンビアにて理科を教えて来ました。本日は現在行っている研究について少しお話ししようと思います。

ザンビアでは、日本でいう中学23年生に「身の回りの理科」、高校生に「物理」の授業を行ってきました。教科書の内容は大半で日本のその学年に習うものと同じです。他方、ザンビアに限らず多くのアフリカ諸国で理数科能力の低さが問題視されており、それを伸ばすためのプロジェクトがよく入っています。まず初めに、私はザンビアと日本の理科教育でどんな違いがあるのだろうということに興味を抱きました。
もちろん、様々な違いがありました。まず、教室環境が違います。ひとクラス当たりの人数、教科書所持率、実験器具の有無などは明らかでした。また、教師の知識不足や教師中心の授業スタイルなども問題視されています。こういった様々な課題がある中で私が注目したのは生徒の基礎能力欠如でした。

教師は授業を計画する際に、生徒の反応を予想しながら進めていきます。その時にどこで生徒がつまづくかという点で、日本の同学年の学生とザンビアの学生では大きく異なります。と言うのは、ザンビアでは中学生・高校生の時点で身に付いているべき基礎能力が定着していないために、簡単な計算、文章理解というところでつまづき、その先のレベルを議論するに至りません。計算を間違える例を次に2つ挙げます。

1、分数が引き算に...
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2、分数の計算で、数値の大きい方から小さい方を割る(この間違いは分数を習い始めたころなら、よくあるでしょうが、この例は中学校2年生の解答です)
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私は、この状態に対し、緊急で対処していく必要があると思っています。既にそれを習得するべき学年を過ぎているにもかかわらず、それが身に付いていない。そして、それが壁となって先の内容を理解できない。理解できないまま上の学年に上がる。といった悪循環が形成されています。つまり、今の学年にいながらにして、基礎能力を身につけ、さらにその学年で習うべきことが理解できるような方法はないかと考えました。私の研究では、高校生を対象に調査をしました。結論としては、基礎能力欠如は練習量が圧倒的に足りていないゆえであり、それに対して有効となるのは、一つのことをパッパッと教えていくのではなくいくつかの段階に細分化してスモールステップで教えていくこと。また、ドリル問題などで繰り返し練習することです。実際にこの方法を試したところ、彼らの正答率は大きく伸びました。今は、この方法を現場の先生方に受け入れてもらうためにはどうしたらいいかということを考えています。

研究したことが今後のザンビアの教育に少しでも貢献できたらという思いで、現在、来年3月卒業に向けて修士論文を書いています。

以上、「研究のはなし」でした。
それでは、長々と失礼しました。